民法改正と実務への影響(請負契約) |
先日、民法改正研修会へ。
今回は、4回シリーズの最終回でした。 しかし、個人的な都合により、途中退席となったので、残念ながら前半部分しか聞くことができませんでした...
それでも、参考になる部分は多々ありましたし、このシリーズを通して講師を務めて下さった先生の話も聞きやすいものでしたので、また機会があれば、ぜひ受講したいですね。
ということで、今回は「請負」について。
まず、現行では 売買契約…法定責任説=現状での引渡しでよく、瑕疵があってもそのまま引き渡せば一旦契約は成立する。(483条) ⇒ 契約不履行にはならない。 ⇒ 瑕疵担保責任の問題へ。 請負契約…契約責任説=契約内容に従って完成させなければならず、瑕疵があるなど、内容と異なれば契約不適合となる。 ⇒ 債務不履行となる。
となっていますが、以前の研修会記事でも述べたように、売買契約に関しては、危険負担という概念がなくなり、事実上、債務不履行の問題として扱うなど、契約責任説へと内容が大きく変化しています。 (過去記事「民法改正と実務への影響(売買契約法)」) これにより、改正では、契約内容と完成物が異なる「契約不適合」の場合の取扱いの差が小さくなり、分かりやすくなってきたのかな、と思います。
さて、では内容へ。
1.注文者が受ける利益の割合に応じた報酬(第634条) 例)AはBとの間で工事請負契約を締結し、Bは工事に取り掛かったが、 工事全体が未完成のままBの倒産により工事が中断した。 そのため、AはBとの契約を解除し、すでに支払った工事代金の返還 を求めた。
現行では、判例があり、「工事内容が可分であり、当事者が既施工部分の給付に関し利益を有する場合、特段の事情がない限り、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部を解除することができるにすぎない」とされています。
ここでいう「可分」というのは、物理的な分け方だけではなく、割合を示すことができれば、それも「可分」として扱われます。 今回の場合も、例えば工事が「半分」は済んでいた場合、「半分」と言えるということは「可分」ということになります。 また、そのまま別業者に続きを依頼し完成した場合、完成物には前業者が施工した部分が含まれているので、注文者は利益を有することにもなります。 ということで、既に施工されている半分については契約を解除できず、また、工事代金の返還もない、ということになります。
では、これが改正後はどうなるのか。 過去記事にある「無催告解除」(新542条)より、解除は原則可能となります。 そして、「注文者の責めに帰することができない事由により仕事が完成できなくなった場合、または、仕事完成前に契約解除された場合、請負人は報酬を請求できる」とされています。 ただし、「工事内容が可分で、当事者が既施工部分の給付に関して利益を有する場合」とされており、工事代金の返還の可否については変化がないようです。
ここでもそうですが、注文者にとって何か「不都合」があれば、その解決をただ待つのではなく、その契約を解除して、新たな相手を探し契約する。注文者からの解除が容易になっている更なる例です。
では、注文者にとっての「不都合」とは何なのか? ここが問題になってきます。 その辺りも含めて、次のお題へ。
2.仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任(634条、635条削除) 例)AはBとの間で建物工事請負契約を締結し、 Bは工事を完成してAに建物を引き渡したが、 後にそれに瑕疵があることが判明し、 Aは契約の解除を主張し、支払った報酬の返還を求めた。
瑕疵担保責任の問題ですね。 現行では、目的物が建物であるため、契約の解除はできません。 瑕疵担保責任の問題として、修補請求または損害賠償請求、もしくはその両方を請求することになります。
では、改正後は? まず、冒頭で述べたように、売買契約の内容が、法定責任説から契約責任説へと変わっています。 つまり、ここでいう「瑕疵」といのも、客観的なものではなく、注文者の意向に沿うことが大切で、その内容をしっかりと契約書に盛り込むことが大切になるということです。
契約の時点で当事者がしっかり内容を詰めて合意をとっておく。 この研修会で通してポイントになっている部分ですね。
しかし、これを怠っていると、注文者が「思っていたのと違う」ということだけでも契約不適合となる可能性が出てきてしまうのです。
さて、では何ができるのか。 559条により、多くの場面で売買契約の規定を準用することになります。 ●瑕疵修補請求(634条1項⇒新562条で売買契約を準用) 根拠条文がなくなるため、免責を契約書に盛り込むことが大切です。 ●損害賠償請求(634条2項⇒新564条で売買契約を準用、新415条) 根拠条文が変更となり、時効も変更となります。 ●報酬減額請求(新563条で売買契約を準用) ●契約の解除(635条⇒新564条で売買契約を準用、新541条、新542条) ここでは、「建物その他の土地の工作物」の例外が削除されているので、土地・建物でも 解除することが可能になっています。 ●担保責任の存続期間(637条を改正、638条、639条は削除) 「引渡しの時から1年以内の請求、解除」から 「不適合を知った時から1年以内の通知」へ変更され、請求自体は後でも良くなっています。 また、ここでも土地・建物の特例がなくなり、全て1年で統一されています。 ●担保責任を負わない旨の特約(640条⇒新572条で売買契約を準用)
以上のような内容になっています。
今回は、ここまでで泣く泣く退席となりました...
この研修会シリーズを通して、契約書の重要性を痛感した気がします。 まだしばらく先の話ではありますが、来るべきその時のために、しっかりと準備しておきたいと思います。
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民法改正と実務への影響(賃貸借法) |
迫りつつある民法の大改正。
ということで、先日、研修会「民法改正と実務への影響」へ。
全四回のシリーズもので、先月に続き今回が第三回となります。 前回の記事はこちらです。(過去記事「民法改正と実務への影響(売買契約法)」)
売買契約法が中心だった前回に続き、今回は賃貸借法が中心の内容でした。 今回も、自身の忘備録及び頭の整理を兼ねてしたためたいと思います。 では、さっそく内容へ。
1.賃貸借の存続期間(民法604条) これまでの賃貸借の存続期間は「最長20年」でした。 もし、それ以上の年数で契約を結んでも、20年になってしまいます。 もちろん、更新が可能ですが、更新後も「最長20年」です。
それが、今回の改正で「最長50年」へと延長されます。 ただし、借地借家法29条2項により、建物の賃貸借にこれは適用されず、現行通りとなります。
注意点としては、改正民法の施行日以前に締結されたものは現行通りで良いのですが、施行日以降であれば新たな契約の締結、そして更新の場合でも、改正後の内容に基づくことになります。 これは、存続期間に限ったことではないので、新たな契約締結ではもちろんのこと、更新の場合も、しっかりと内容を確認する必要が出てきます。
2.不動産の賃借人たる地位の移転(民法605条の2) 例)AはB所有地を賃借していたが、その契約期間中にBはその土地をCに譲渡した。 B ―→ 賃貸借 ―→ A (土地) ↓譲渡 C
●譲受人Cが新賃貸人になる。(C=所有者・賃貸人) この場合、まず譲受人Cは、対抗要件を備えれば、新賃貸人としての地位を取得できます。(新605条の2の2項) この対抗要件とは、基本的には賃貸借権を登記することです。 その他、借地借家法に基づく要件も認められていますが、それは以下の項目で。
そして、新605条の3より、賃借人の同意は不要とされています。
また、新605条の2の4項により、敷金返還債務や費用償還債務も譲受人Cへ移転します。 ただ、このことについては、譲渡前にすでにB-A間に存在した家賃滞納などをどう処理するのか、例えば、BはAから敷金 40万円を受け取っており、Cへの譲渡時にAの家賃滞納が20万円あった場合、譲渡時に一旦清算して、敷金から滞納分 を差し引いた20万円がCへと引き継がれるのか、といったことは規定にないので、そういったことは契約書に盛り込むこと が必要になります。
●賃貸人の地位は譲渡人Bに残し、かつ譲受人Cが譲渡人Bに当該物件を賃貸する。(C=所有者・賃貸人,B=転貸人) 新605条の2の2項により、譲渡人への賃貸人の地位の留保が可能です。 この場合、譲受人Cと譲渡人Bは賃貸借、譲渡人Bと第三者Aは転貸借の関係になります。(新613条) つまり、転借人Aは賃貸人Cに直接、家賃の支払い等を行うことになります。
また、賃貸人Cと賃借人Bとの関係が解消した場合、C-A間の賃貸借関係に切り替わることで、転借人Aの地位の安定を 図っています。
3.不動産の賃借人による妨害の停止の請求等(新605条の4) 例)A所有のアパートの一室を賃借するBは、隣室のCの騒音に悩まされている。
現行では、所有者であるAは、所有権に基づく妨害排除請求が可能ですが、賃借人であるBにはできません。 つまり、Bは、Aに対して、Cに何かしらの対応を請求するということしかできないのです。
それが、新605条の4では、債権者代位権の転用のような感じで、不動産賃借人の妨害排除請求権を規定しています。 これにより、BはAの代わりに、Cに直接対応することが可能になります。
では、どんな場合でも直接対応してしまっていいのかというと、そういうわけではなく、条件が以下の2点あります。 ●賃借人が対抗要件をそなえていること。 ●第三者にによる占有又は占有の妨害があった時のみ可能。
まず、賃借人の「対抗要件」と何か。 条文には、「605条の2第1項に規定する~」とあり、新605条の2ではこうあります。 「前条、借地借家法第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、 その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。」
「前条」というのは登記です。 が、現実として、これを登記すると貸主にとって面倒なことが多いため、応じてくれないいことが普通です。 では、結局意味がないのか...? というと、そうでもなく、「借地借家法第十条又は第三十一条」があります。 ●借地借家方第十条は、登記が無くても、実際にその土地に建物を所有していれば借地権が認められる。 ●借地借家法第三十一条は、登記が無くても、実際の建物の引き渡しがあれば、賃貸借権は認められる。
ということで、賃貸借権の登記が無くても、例のように、賃借人Bが、実際に部屋を引き渡され、住んで入れば対抗要件を満たすことにはなります。
ただ、例の場合は、「占有」に関する問題ではないので、結局、賃借人BはCに直接対応することはできませんが...
4.賃借物の修繕(新606条、新607条の2) 例)A所有物件の一室を賃借してパン屋を営業するBは、ある日、天井に雨漏りのにじみがあることに気付いた。
現行では、賃貸人に修繕義務があるだけですが、改正後は、賃借人に修繕する権利が認められることになります。
賃貸人の修繕義務については、免責事由が追加され、賃借人に帰責事由がある場合はその義務を免れます。 この辺りの詳細は、契約書でしっかりと規定しておく必要があるでしょう。
そして、賃借人の修繕する権利については、以下の2つの要件が課されています。 ●賃借人から賃貸人へ修繕が必要である旨の通知し、賃貸人がそれを知ったのに、相当の期間内に修繕しないとき。 ●急迫の事情があるとき。
特に、2つ目の要件ですが、これは、既存の判例でも、その危険を放置したことで賃借人が深刻な損害を受けたのですが、賃借人が放置したことに問題があった、つまり、賃借人は危険なことが分かっているなら、賃貸人の修繕をただ待つのではなく、別の店舗を探す等するべきだった、とされています。
5.賃借物の一部滅失等による賃料の減額・解除(新611条) 例)Bは、A所有土地を賃借し、宅地開発を行っていたが、突然の災害によりなかなか買い手がつかず、当初の予測より、 大幅な減収を強いられることになった。
これは、不可抗力による滅失なので、現行では「減額することができる」又は「解除することができる」となります。
改正後、まず、「滅失」の要件が、「その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」を含み、拡張されました。 このことから、何を持って「使用及び収益ができなくなった場合」とするのかが問題になるので、具体的な内容は契約書に盛り込むことが必要です。
そして、「減額することができる」という文言が「減額される」ということで、当然減額へと変わっています。
また、「解除」についても、「賃借人の過失によらないこと」という要件が削除されており、使用や収益ができない場合は、一方的な賃貸借関係の解除がしやすくなります。 例とは異なり、賃借物が全部滅失すれば、賃貸借は終了です。
ただ、これらの改正は、宅地の賃貸借に限定され、耕作地や牧畜地は現行通りです。
6.賃借人の原状回復義務(新621条)、敷金(新622条の2) 色々と問題になった敷金ですが、その規定が新設されます。 現在のところ判例では、敷金は家賃の3.5倍程度までなら許容されているようです。 保証金というのも、概念としては敷金に含まれているので、形としては、敷金+礼金という形が無難なようですね。
原状回復の範囲としては、「通常損耗分」と「経年劣化分」以外で、賃借人に帰責事由があるものとされています。 ただ、このあたりは任意規定なので、当事者間で別途、賃借人の負担にするといった契約は可能でしょうが、上述の敷金の話も含めて、賃借人にあまりに不利益な内容だと、消費者契約法第十条により、無効となることも考えられるので、十分な注意が必要です。
といった感じでした。 これまで述べてきた通り、やはり、契約書の重要性が増してきそうな感じです。
次回はシリーズ最終回。しっかりと学んできたいと思います。
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民法改正と実務の影響(売買契約法) |
迫りつつある民法の大改正。
ということで、昨日、研修会『民法改正と実務への影響』へ。
全四回のシリーズもので、今回は第二回「売買契約法」です。 ちなみに、第一回は都合が合わず欠席でした...
で、自分の頭を整理するのも兼ねて、その内容をしたためてみたいと思います。
内容は、時間も限られていたため、5つのテーマに絞られました。 それぞれ、「手付」「危険負担」「契約の解除」「債務不履行による損害賠償」「瑕疵担保責任」となります。
では、以下に内容を。
1.手付(民法557条改正) 例)AがBからCの土地を購入する旨の契約をした。 Aは契約時にBに手付金を支払い、その後、Bに履行の請求をした。 Bは、この請求を拒否し、Aに手付金の倍額を提供することで、契約の解除の主張した。 なお、Bが解除を主張したとき、BはAへの転売目的のために、Cから当該土地を購入し、所有権移転登記もしていた。
この場合、いわゆる手付倍返しにより、売主は契約の解除を主張することが可能です。 しかし、現行557条ではこうあります。 「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは~解除することができる」 例の通り、Bはすでに履行に着手しています。 ということは、この契約解除は認められないのでしょうか? 判例等によると、この解除は認められるはずです。 解除を主張されたAに損害は出ないはずですからね。 つまり、大事なのは、解除を主張された相手に損害が出るのかどうか。 今回は、解除を主張したBが履行に着手しており、そのBの都合で解除するわけですから、特に問題ないのです。
そこで、その辺の曖昧さを取り除くために、557条はこのように改正されます。 「~契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着した後は、この限りでない。」 といことで、解除する側でなく、解除される側が履行の着手をしているかどうかが問題になることを明確にした形になります。 また、今回のように売主が解除する場合は、手付の倍額を「現実に提供」することが要件であることも明記されました。
2.危険負担(534条,535条削除など) 例)10月1日、Aは、Bから住宅を購入する旨の契約をし、引渡しを11月1日とした。 しかし、10月20日、火災により当該住宅は焼失した。
いわゆる不能の状態です。 そもそも、不能には、原始的不能と後発的不能があります。 時系列で並べると以下のような感じです。 原始的不能⇒契約成立⇒後発的不能⇒引渡し⇒瑕疵担保責任
現行法では、不能は以下のように対処されます。 ●原始的不能 全部不能の場合…そもそも家が無かったという状態なので、契約自体が無効になります。 一部不能の場合…例のような特定物であれば、契約は成立したものとみなし、現状のまま引渡し、 あとは瑕疵担保責任の問題になります。つまり、売主Bは無過失責任です。 不特定物であれば、債務不履行の問題としてみられるのですが、目的物が 特定物であるか不特定物であるかの違いで、売主Bの負担が変わることになります。 ●後発的不能 債務者Bに帰責事由(故意又は過失)がある場合 債務不履行として扱われ、Aは損害賠償請求や契約の解除が可能です。 債務者Bに帰責事由(故意又は過失)がない場合 危険負担の問題となり、債権者Aに帰責事由があればAの負担となり、AはBに代金を 支払う義務があります。 どちらにも帰責事由がなく不可抗力だった場合、特定物であれば債権者Aの負担で、 やはり、AはBに代金支払い義務があります。 不特定物であれば、債務者Bが新たに目的物を用意する必要があります。
例では、契約成立後の不能なので、後発的不能。 そして、火災が原因なのですが、詳細を設定していませんが、不可抗力としましょう。 すると、特定物なので、この場合はAは家を手に入れることができず、代金は支払う、ということに...
では、改正後はどうなるのか。 この危険負担を定めた534条とそれに関連する535条が削除され、危険負担という考え方がなくなります。 その結果、以下のような対処になります。 ●原始的不能 全部不能の場合…変わらず契約自体が無効です。 一部不能の場合…事実上、債務不履行の問題として一本化して扱われることになります。
●後発的不能 債務者Bに帰責事由がある場合 変わらず、債務不履行による損害賠償請求や解除が可能です。 債務者Bに帰責事由がない場合 債権者Aに帰責事由があれば、変わらずAに代金支払い義務だけが残ります。 不可抗力であれば、特定物の場合、契約の解除をすることが可能になります。 また、反対給付(例であれば家はなくなったがAがBに代金を支払うこと)の履行拒絶が 可能であるであることが536条に明記されました。
●引渡し後の滅失・損傷 債務者Bに帰責事由がある場合 567条で新設され、その反対解釈として、AはBに「履行追完」「代金減額」「損害賠償」「契約解除」 を求めることができます。 双方に帰責事由がない場合 567条通り、Aは上記の事柄がいずれもできず、また代金支払い義務も残ります。
3.契約の解除(541条など改正) 例)10月1日、Aは、Bから住宅を購入する旨の契約をし、引渡しを11月1日とした。 しかし、10月20日、落雷により当該住宅は焼失した。
上で見たように、現行法であれば、後発的不能で不可抗力によるもので特定物なので、Aに代金支払い義務だけが残ることになります。つまり、危険負担です。
改正後は、解除が可能になるのですが、ここで解除には以下のような区分ができます。 ●法定解除…法で定められた解除。 ●約定解除…契約書で定める解除。 ●合意解除…当事者が納得し、合意することでできる解除。
今回は、そのうちの法定解除なのですが、現行法で「履行遅滞による解除」と「履行不能による解除」に区別されている状態が、「当事者の一方がその債務を履行しない場合」に一本化されることになります。 そして、その中で、「催告解除」と「無催告解除」という、催告が必要かどうかという部分で区別されることになりました。
感覚的には、契約の解除に対するハードルが下がった感じで、債務者の帰責事由も要件からなくなっています。 ただし、債権者に帰責事由がある場合は、解除権が行使できない旨が543条に明記されました。
また、以前過去記事(民法改正を学ぶ)でも触れましたが、 「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は解除が認められません。
「軽微」とは?どの程度? これは、今後の判例などによって確定していくのでしょう。 そして、こういったことは特に契約書作成の際にはしっかりと設定し、盛り込んでおく必要が出てきます。 基本的に、様々な事柄は当事者同士で話し合って決めるのが原則で、できる限り裁判で解決するような状況は避けるようにもっていっている感じですね。
4.債務不履行による損害賠償(415条) 例)B大学は、Aに、学生の成績を管理するコンピューター・システムを発注した。 このシステムは特別な仕様のもので、設計にはBからAに対して詳細な説明と指示が出され、 Aはそれに応じて設計した。 ところが完成後、システムの欠陥により、完全には機能しなかった。 しかし、BとAの間で交わされた契約書では、Bが行った説明・指示の不適切さにより生じた 損害について、Aが引き受けることは予定されていなかった。
これは、Aは完全な商品を引き渡せなかったので、債務不履行の問題です。 現行法では 「債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったとき」は債権者Bは損害賠償を請求できます。
改正法では、損害賠償の要件が詳細化され、 「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」債務者に帰責事由がある 場合とされています。
いずれにしても、損害賠償には帰責事由が必要なのですが、従来の判例では、帰責事由の判断基準には、債務者の債務不履行そのものが注目されているようです。
5.瑕疵担保責任(570条など改正) 例)中古車販売業者Aは、中古車をBに150万円で売却したが、引渡しの後に、同車のエンジンに 重大な瑕疵のあることが発見され、全部交換が必要となることが判明した。 なお、これに必要な費用は50万円である。
これは、引渡し後に瑕疵が発見されたということで、売主の瑕疵担保責任の問題になります。
現行法では、契約の解除、または損害賠償請求が可能です。 つまり、損害賠償額に修理費用を含めれば良いので、結果として、修理費用は払ってもらえることになります。
改正法では、瑕疵担保責任という言葉がなくなり、扱いとしては債務不履行と同じになります。 つまり、例の場合だと、「履行追完」「代金減額」「損害賠償」「契約解除」を求めることができるということです。 ただ、請求できる期間は瑕疵担保責任を引き継ぎ、1年となっているのは注意が必要でしょう。
その他、注意しておく点は、「代金減額」は原則、「履行追完」の後でなければいけません。 そして、債務不履行には含まれる「数量不足」が除外されています。
といった具合で、感覚的には、いろいろと簡素化と言いますか、一本化的なまとまり方している部分があって、分かりやすくなってきた感じがします。 ただ、上でも述べてきたように、契約書内容の重要性が増してくるのだろうな、とも思います。
まだ、施行までは期間もあるでしょうから、それまでにさらに勉強です。
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民法の大改正 |
約120年ぶりの民法の大幅な改正が迫ってきています。
民法の改正と言えば、昨年も改正がありました。
それは相続に関する事柄で、以下の条文です。 【旧】 民法第900条 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、 嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じく する兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
この条文の赤文字の部分が削除され、現在、
【新】 民法第900条 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の 二分の一とする。
となっています。
「嫡出でない子供(非嫡出子)」とは、婚姻関係にない夫婦の間の子供のことです。
親が結婚しているかしていないかで、子供の相続分が変わるのは、法の下の平等を謳う憲法に違反しているのではないか、という訴えがあり、昨年それが認められ、「嫡出子」も「非嫡出子」も相続分は等しい、ということになったんですね。 ただ、平成7年の判例では、この差は「法律婚の尊重」と「非嫡出子の保護」との調整を図ったものなので合理的理由のない差別とは言えない、とのことで認められていませんでした。
しかし、平成に入ってからの「晩婚化」「核家族化」等の進行による社会情勢の変化を鑑みて、昨年、その判断に変化が出てきたようです。
時が変われば社会の様子も変わります。 やはり、それに合わせて、我々の生活の基盤になる憲法や法律も変わっていくべきでしょう。
そこで、今回の「民法大改正」。 主な注目点をいくつか。
①賃貸契約の「敷金」を定義 何にどれだけ使われているのか分からず、基本的に帰ってこないもの、とすら思っていた(少なくとも私は)敷金 ですが、何らかの形でこれを明確に定義し、契約が終わった時に返還する義務を負わせるものとなるようです。 また、借り主の原状回復義務についても、通常の使用による傷みや経年劣化によるものは借り主が負担しな くてもよくなる、とのことです。これで無用なトラブルを避けられると良いですね。
②企業融資の際の連帯保証で、「個人」が保証人になることを原則禁止 これによって、断りきれず、また、よく考えずになってしまった連帯保証のせいで、その保証人が多額の借金を 背負ってしまう、という事態を避けることができます。 ただ、これは「原則」であって、事前に公証人の前で、本人にがその意思を発し公正証書を作成した場合は、個 人による連帯保証も認められてしまいます。他にも例外があり、目的としては、貸し渋りを防ぐため、なんだそうで すが、これは効力が本当にあるのか少し疑問です。
③消滅時効を「5年」に統一 消滅時効は、その業種によって期限がばらばらでした。それを、今回「債権者が請求できると知った時から5年」 に統一されます。 これで、基本的には「債権者が請求できると知った時から5年」と「権利行使できる時から10年」を基にすれ ば良いということになり、分かりやすくなります。
④法定利率を「3%」に引き下げ、「変動制」に この低金利時代に対応する、ということで、法定金利が5%から3%へと引き下げられることになります。その後、 3年ごとに市場金利の状況に合わせて変動させていくようです。
など、その他、まだまだ多くの部分で大小の改正が行われていくようです。
これから、どの部分がどのように変わり、それが我々の生活にどんな影響を与えるのか。 これは、生活だけでなく行政書士の業務にも直結してくるであろう改正ですので、しっかりと研究していきたいと思います。
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