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塾講師で行政書士の 徒然日記
仕事に関係あることやないこと、趣味の神社巡りやその時その時に感じたこと、思ったことを気ままに綴ってます。業務に関しては、本ブログのリンクから当事務所のホームページをご覧ください。
12 | 2016/01 | 02
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民法改正と実務への影響(請負契約)
先日、民法改正研修会へ。


今回は、4回シリーズの最終回でした。
しかし、個人的な都合により、途中退席となったので、残念ながら前半部分しか聞くことができませんでした...

それでも、参考になる部分は多々ありましたし、このシリーズを通して講師を務めて下さった先生の話も聞きやすいものでしたので、また機会があれば、ぜひ受講したいですね。


ということで、今回は「請負」について。

まず、現行では
 売買契約法定責任説現状での引渡しでよく、瑕疵があってもそのまま引き渡せば一旦契約は成立する。(483条)
         ⇒ 契約不履行にはならない。 ⇒ 瑕疵担保責任の問題へ。
 請負契約契約責任説=契約内容に従って完成させなければならず、瑕疵があるなど、内容と異なれば契約不適合となる。
         ⇒ 債務不履行となる。

となっていますが、以前の研修会記事でも述べたように、売買契約に関しては、危険負担という概念がなくなり、事実上、債務不履行の問題として扱うなど、契約責任説へと内容が大きく変化しています。
(過去記事「民法改正と実務への影響(売買契約法)」)
これにより、改正では、契約内容と完成物が異なる「契約不適合」の場合の取扱いの差が小さくなり、分かりやすくなってきたのかな、と思います。

さて、では内容へ。


1.注文者が受ける利益の割合に応じた報酬(第634条)
例)AはBとの間で工事請負契約を締結し、Bは工事に取り掛かったが、
 工事全体が未完成のままBの倒産により工事が中断した。
 そのため、AはBとの契約を解除し、すでに支払った工事代金の返還
 を求めた。


現行では、判例があり、「工事内容が可分であり、当事者が既施工部分の給付に関し利益を有する場合、特段の事情がない限り、既施工部分については契約を解除することができず、未施工部分について契約の一部を解除することができるにすぎない」とされています。

ここでいう「可分」というのは、物理的な分け方だけではなく、割合を示すことができれば、それも「可分」として扱われます。
今回の場合も、例えば工事が「半分」は済んでいた場合、「半分」と言えるということは「可分」ということになります。
また、そのまま別業者に続きを依頼し完成した場合、完成物には前業者が施工した部分が含まれているので、注文者は利益を有することにもなります。
ということで、既に施工されている半分については契約を解除できず、また、工事代金の返還もない、ということになります。


では、これが改正後はどうなるのか。
過去記事にある「無催告解除」(新542条)より、解除は原則可能となります。
そして、「注文者の責めに帰することができない事由により仕事が完成できなくなった場合、または、仕事完成前に契約解除された場合、請負人は報酬を請求できる」とされています。
ただし、「工事内容が可分で、当事者が既施工部分の給付に関して利益を有する場合」とされており、工事代金の返還の可否については変化がないようです。


ここでもそうですが、注文者にとって何か「不都合」があれば、その解決をただ待つのではなく、その契約を解除して、新たな相手を探し契約する。注文者からの解除が容易になっている更なる例です。

では、注文者にとっての「不都合」とは何なのか?
ここが問題になってきます。
その辺りも含めて、次のお題へ。



2.仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任(634条、635条削除)
例)AはBとの間で建物工事請負契約を締結し、
 Bは工事を完成してAに建物を引き渡したが、
 後にそれに瑕疵があることが判明し、
 Aは契約の解除を主張し、支払った報酬の返還を求めた。


瑕疵担保責任の問題ですね。
現行では、目的物が建物であるため、契約の解除はできません
瑕疵担保責任の問題として、修補請求または損害賠償請求、もしくはその両方を請求することになります。


では、改正後は?
まず、冒頭で述べたように、売買契約の内容が、法定責任説から契約責任説へと変わっています。
つまり、ここでいう「瑕疵」といのも、客観的なものではなく、注文者の意向に沿うことが大切で、その内容をしっかりと契約書に盛り込むことが大切になるということです。

契約の時点で当事者がしっかり内容を詰めて合意をとっておく。
この研修会で通してポイントになっている部分ですね。

しかし、これを怠っていると、注文者が「思っていたのと違う」ということだけでも契約不適合となる可能性が出てきてしまうのです。

さて、では何ができるのか。
559条により、多くの場面で売買契約の規定を準用することになります。
 ●瑕疵修補請求(634条1項⇒新562条で売買契約を準用)
     根拠条文がなくなるため、免責を契約書に盛り込むことが大切です。
 ●損害賠償請求(634条2項⇒新564条で売買契約を準用、新415条)
     根拠条文が変更となり、時効も変更となります。
 ●報酬減額請求(新563条で売買契約を準用)
 ●契約の解除(635条⇒新564条で売買契約を準用、新541条、新542条)
     ここでは、「建物その他の土地の工作物」の例外が削除されているので、土地・建物でも
     解除することが可能になっています。
 ●担保責任の存続期間(637条を改正、638条、639条は削除)
      「引渡しの時から1年以内の請求、解除」から
      「不適合を知った時から1年以内の通知」へ変更され、請求自体は後でも良くなっています
     また、ここでも土地・建物の特例がなくなり、全て1年で統一されています。
 ●担保責任を負わない旨の特約(640条⇒新572条で売買契約を準用)

以上のような内容になっています。

今回は、ここまでで泣く泣く退席となりました...


この研修会シリーズを通して、契約書の重要性を痛感した気がします。
まだしばらく先の話ではありますが、来るべきその時のために、しっかりと準備しておきたいと思います。



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テーマ:仕事日記 - ジャンル:日記



プロフィール

伊藤 淳

Author:伊藤 淳
ブログはボチボチ更新中。
趣味は、フットサル、神社巡り、音楽鑑賞(主にHR/HM、アニソンなど)。
現在、行政書士として、京都、奈良を中心に活動中。京都府木津川市の進学ゼミエストという塾で塾講師もやっています。
行政書士業務については、リンクより当事務所のホームページをご覧ください。


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