塾講師で行政書士の 徒然日記
仕事に関係あることやないこと、趣味の神社巡りやその時その時に感じたこと、思ったことを気ままに綴ってます。業務に関しては、本ブログのリンクから当事務所のホームページをご覧ください。
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民法改正を学ぶ
先日は「民法(債権関係)改正を学ぶ」ということで、研修へ。

20150315研修

立命館大学の准教授を招いて講義をしていただきました。
まず思ったのは、普段から講義をされているので、やはり語りや進め方が上手い。

普段は、行政書士さんや他の士業さんなどが講義をしてくれて、それに不満があるわけではないのですが、やはり聞きやすさが違うかなと。


さて、それはそれで。
民法改正を学ぶ、とはいっても、さすがに全てを一気にこなすには時間も足りなければ体力ももちません...

ということで、今回は「売買契約を中心に」というこになりました。
以下が大まかな内容です。


■改正の目的とその概要
この改正の目的としては大きく2つ。
  ①社会・経済の変化への対応
  ②「分かりやすい」民法へ

まず、①社会・経済の変化への対応ですが、一番の主眼であると考えられるのが「国際取引への対応」です。
これは、取引に関する決め事を世界の基準に合わせていこうとするものですが、日本がこれまで行ってきた実務との間に開きがあり、そのために実務レベルからの反発にあい、この目的に関してはずいぶん後退してしまったとのことでした。
また、変化への対応ということで、よく話題にあがっていましたが、「短期消滅時効の期限の一本化」「法定利息の5%から3%への変更」なども盛り込まれています。

続いて②「分かりやすい」民法へ
そもそも文体が古臭く、読むこと自体が億劫になるような感じでしたが、この改正で文章の平易化がすすめられるようです。
また、定義規定を入れたり、判例で確立している法理も明文化するなど、少し回りくどい部分も出てきますが、親切にはなっていくのでしょうか。



■売買契約の成立をめぐる規定の改正
ここでは以下の4つの項目を見てみます。
  ①契約の基本原則
  ②契約の成立
  ③売買固有の問題
  ④無効及び取消し

まず、①契約の基本原則
ここでの大きな変化は、履行不能に関する考え方です。
従来、「原始的不能」、つまり契約成立前に実は買おうとしていた家が消失していたといった場合は、その契約は「無効」となり、そもそもそんな話は無かったことになってしまいます。
それが、今回は「原始的不能」に陥っても、契約そのものは有効となります。そうすることで、債務者を債務不履行の状態にし、債務者に対して「損害賠償の請求」や「契約の解除」といったことが可能になってきます。
そして、この「不能」に関しては、こんな表現があります。

   「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らし不能であるとき」
                                       (民法(債権関係)の改正に関する要綱案より抜粋)

つまり、原始的不能だから終わり、ではなく、契約内容等と照らし合わせてみていく必要が出てきます。
今回の改正の軸のようなものだそうですが、これからは「契約者同士が何を内容として合意していたか」を重視していくため、債務不履行の場合の対処やリスクに関しても取り決めをし、詳細を契約書に盛り込んでおくことが大事になってくるということです。
消費者も、自身の契約内容に関しては把握が必要で、人任せではダメになってきます。
憲法にもあるように、自身の権利を守るために「不断の努力」が必要であるといったところでしょうか。


そして②契約の成立
ここでは、「承諾」に関する変更があります。
従来は申込は「到達主義」、承諾は隔地者間であれば「発信主義」だったのですが、改正後は、まず「隔地者」という文言が削除され、承諾も「到達主義」で統一されます。
それにより、承諾の通知が延着した場合などの対処が簡素化されて、分かりやすくなります。


③売買固有の問題
これは、「手付」に関する変更です。
従来は、売る主が契約解除するには、手付の倍額を「償還」するという表現だったのですが、それが手付の倍額を「現実に提供する」と変更されています。


最後に④無効及び取消
無効はそもそもの契約が無かったことになります。
取消は、取り消すまでは有効ですが、取消後は契約成立時に遡って無効となります。

そして、改正後には「原状回復義務」が明記されます。
ここでも変更があり、従来は、無効であれば、それで利益を得た者は「不当利得」となり、その「不当利得」の取り決めに従って、「善意」(無効だと知らなかった)なら現存利益の返還「悪意」(無効だと知っていた)なら全額+利息の返還とされていました。
しかし、改正後は、全額+利息が基本となり、例外的に、贈与のような無償行為の場合や行為無能力者の場合にのみ例外が設けられ、現存利益の返還でよいとされます。
つまり、基準が「善意か悪意か」ではなく、「無償行為か有償行為か」で原状回復の範囲が変わることになります。



■売買契約の有効要件
ここでは以下の4つ。
  ①契約の内容
  ②意思表示
  ③契約の主体

まず、①契約の内容
ここは「定型約款」に関するものです。
定型約款に関しては、「みなし合意」という考え方が示され、一定の条件を満たせば、定型約款の個別の条項についても合意したものとみなす、とされています。
しかし、それでは消費者にとって不当な条項が巧妙に隠されているかもしれません。そんな時のために、信義則に反するような条項に関しては同意しなかったものとみなす、という文言もあります。
つまり、不当な条項が一部あったとしても、それで契約自体が無効になるわけではなく、その不当な部分のみがなかったことになるというわけです。これにより、いちいち、新たな契約を結び直す必要もなくなるということですね。


②意思表示
ここでは、「心裡留保」での第三者の保護が抜けていたので、その部分が新設されます。

そして、「錯誤」に関して、まず「無効な行為」だったのが「取消可能な行為」となります
また「表示錯誤」「動機錯誤」という二分法を明文化し、以下のように2段構えになります。

   「表示錯誤」は自動的に取消が可能。
   「動機錯誤」は動機を示していた場合のみ取消が可能。

最後に「詐欺」に関して、「第三者の詐欺」が取り消せる場合は、相手方が「悪意」(詐欺は知っていた)の場合のみでしたが、「有過失」(知ることができた)の場合も可能になっています。
そして、第三者の保護に関しても、これまで「善意」(詐欺と知らなかった)であれば保護されましたが、改正後は「善意かつ無過失」であることが必要とされます。
つまりこれは、もし、こういった詐欺に巻き込まれた場合、ただ「知らなかった」では足りず、「調べてみたけど分からなかった」というところまでしておかないといけないことになります。


③契約の主体
ここでは、代理人の行為能力に関して、制限行為能力者が代理人になることができ、その場合、行為能力の制限を理由に取消はできない、ということは変わりませんが、こんな文言が追加されました。

 「ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りではない。」
                                         (民法(債権関係)の改正に関する要綱案より抜粋)

つまり、未成年の子の親が認知症等で制限行為能力者になった場合の保護を図っているということですね。

その他、復代理人に関する規定の削除、無権代理における本人の責任範囲の拡大などがあります。



■売買契約の効果
ここでは2点。
  ①正常な履行
  ②不正常な履行

①正常な履行
まず、特定物引き渡しの場合の注意義務ですが、従来はいわゆる「善管注意義務」
これがこんな表現に変わります。

 「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって」
                                      (民法(債権関係)の改正に関する要綱案より抜粋)

この表現が今回の改正の主旨を表しているそうですが、これはつまり、「契約の内容・趣旨」+社会通念に照らして考えるということで、上述した通り、これからは契約そのものを細部にわたってしっかり取り決めることが求められているということですね。

その他、他人物売買において、行為そのものが有効なのは変わりませんが、売主は、登記や登録などの対抗要件を相手方に備えさせることまで義務付けられています


②不正常な履行
ここでは多くの変化がありますが、まず、債務不履行における免責事由に関して、帰責事由の概念が少し変わります。
従来は「故意または過失」であったのが、先ほどの「契約その他の~」に代わっています。つまり、契約の内容による、ということです。ただ、結局「社会通念」も含まれるので、実際はそれほど大きくは変わらないのでは、ということでした。

他に、賠償額の予定がある場合でも、裁判所が増減することができるようになる。債権者に帰責事由がある場合には、債権者からの解除はできない。その他、上述の法定利息の変更や、消滅時効に関する改正などがあります。

最後に、「危険負担」については、規定が削除されます。
「原始的不能」の場合は上述の通りです。引き渡し後は、買主のみの問題になります。
問題は、契約成立から引き渡しまでの間です。
もし、債務者に帰責事由があれば、債務者の債務不履行となり、強制履行、損害賠償請求、契約解除などが可能です。
では債務者に帰責事由がなかった場合どうなるか。従来では、ここで危険負担の考え方が出てきましたが、改正では、以下のようになっています。

  両者に帰責事由がない場合…基本は履行不能で契約解除。解除しない場合、債権者は反対給付の履行を拒む
                     ことができる

  債権者に帰責事由がある場合…上述の通り、債権者からの契約解除はできない。また債権者は反対給付の履
                      行を拒むことができない


つまり、債権者(買主)に帰責事由がある場合は、物の引き渡し前でも代金を支払う義務があるということです。



一部ではありますが、以上のような感じです。

本格的な施行は3~4年先だろうとのことでしたが、一部だけでも、大きな変化が多くあるので、少しずつ準備しておくことが必要ですね。

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プロフィール

伊藤 淳

Author:伊藤 淳
ブログはボチボチ更新中。
趣味は、フットサル、神社巡り、音楽鑑賞(主にHR/HM、アニソンなど)。
現在、行政書士として、京都、奈良を中心に活動中。京都府木津川市の進学ゼミエストという塾で塾講師もやっています。
行政書士業務については、リンクより当事務所のホームページをご覧ください。


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